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「マスメディア部はそう言ってるけど…。 当の本人は寝こんでるし、私も…とにかく、この取材はやめさせたいの」 「寝こんでる? 何、どうかしたの?」 「あ、ううん、ただの風邪。 でも、ちょっとひどくしたみたいで」 外廊下から校舎に入って、一年生の教室に向かう。 心配するように眉を寄せた美沙ちゃんへ軽い形に返しながら、私はまた昨夜のことを思い起こした。 看病の手は不足しないだろうけど、やっぱり一度様子を見にいこう。というか、あの知り合いさんに任せておくのが今は不安だ。 「そっかぁ、それで本人に伝えてないのね。 まったく、昔から、栗は板ばさみが好きだねぇ」 「えっ? 好きじゃないよ」 気がついたら、一緒に歩く子から納得する声がして、私は慌てて会話に戻った。 多分、三年前のお隣付き合いと友達付き合いの板ばさみのことを言っているのだろうけど。すでに思い出になっているものを持ちださないでほしい。
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