3人が本棚に入れています
本棚に追加
夕暮れの空はまだうっすらと明るい。
歩を進める私は、
そんな薄暮の光景を木々の隙間に見上げてみた。
もっと早く来られればいいのだけれど、
やっぱりこの時期にそれは無理らしい。
まあ、今日は一度家に帰ったから、
そのせいともいえる。
ミニバッグ片手に玄関へ着けば、こちらが手を伸ばす前に引き戸がからりと開けられた。
「いらっしゃい。居間から見えてたよ」
戸に手を添えて出迎えてくれたのは、
なんだか久しぶりに見る、ここの家主さん。
「横宮さん。こんにちは、
風邪、もう大丈夫なんですか?」
「ん? ああ、うん。大丈夫」
「よかったぁー。結局三日も寝こんでましたもんね」
玄関口に上がりながら、
大げさでなくほっと胸をなでおろす。
この玄関を放り出されたあの夜は、
今日から見れば三日前のことだった。
おととい、昨日と訪ねても聞かされる言葉は変わらなくて、長すぎやしないかと心配が募っていただけに、こうして顔を見られたことが素直に嬉しい。
最初のコメントを投稿しよう!