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お茶の用意のため台所に入った横宮さんへ、 居間の入口から確かめてみる。 「いつ頃だったかな。準備が始まったって」 「あ、それじゃあ二週間くらい前ですか。 よく覚えてましたねぇ」 「覚えていたというか、 君の顔を見て思い出したんだよ」 すっかり忘れていたと感嘆したら、 お茶を持って出てきた横宮さんに笑われた。 自分で話しておいて忘れているのだから、 笑われても仕方ないかもしれない。 でも、とにかく、それならそれで都合がよかった。 「……あの。それでね、横宮さん」 居間の座卓に向かいながら、 私はそっと口火を切る。 ここまでの時間でわかっていた。 ──二人きりだ。 「相談があるんです」 「え、何?」 「実は、その文化祭で──」
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