後章

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「…何か? 日比谷さん」 にわかに注目を独占したその子へ、 立川さんが半ば投げやりに問いかけた。 満面の笑みで通路いっぱいを遮っているから、 多分応じるしかなかったんだと思う。 「あっ、あたしの名前覚えてました? うれしー、 そんな立川部長にとっておきのプレゼンをします!」 「…何?」 「はい! 今回の特集記事、 ぜひうちの店を取材してください!」 ……ひゅるんっと、渡り廊下を一際寒い風が吹いた。 「──はい?」 「あたしの家、花屋なんですよ。フラワーショップ。 でも最近不景気でしょう、うちもちょっといまいちみたいで。ということで、マスメディア研究部の皆さん! 文化祭特別号の特集に、ぜひともうちの花屋を取り上げてください! インタビューとかいくらでも受けますし花屋の仕事のあれやこれやも教えます。 あと、文化祭後は期間限定、花束ご注文のお客様に限り『クライシス読んだよ』でなんとお値段半額に!」 「………」 妙に具体的だけど…、花屋の娘が、勝手に約束していいものじゃないよね、それ。
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