後章

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「却下」 案の定、プレゼンが終わって数秒とたたずに、 立川部長がつれない返事を撃ち放った。 「特別号の特集が宣伝記事? 華がなさすぎる」 「花ならありますよ、花屋なんだから」 いや、そっちの花じゃないと思う。 「あんた、さ……まさか、 これで説得できると思ってた?」 あまりの事態に、一緒に来たもう一人が言いづらそうな声を出した。 「ん? 良い考えじゃない? うちは売り上げアップが望めるし、 栗だって助かるし。一石二鳥でしょ?」 「え。…あ、まぁ…?」 でしょ、と言われて、 曖昧な頷きを返してしまった自分が哀しい。 確かに美沙ちゃんの案が通れば、 私がこうして頑張る必要はなくなるのだ。 ああ、こんな打算を働かせる日が来るなんて。 でも、助かることには違いない。 「あなたたちが助かっても、うちは助からない。 まったく二人とも、特に田鍋さん、特集記事は変えないって何度も話しているでしょう。 もうちょっとそこのお友達みたいに、聞きわけよくしてもらいたいものだわ」 にわかに芽生えた共犯意識に悩む間に、 立川さんが話を打ち切ってしまった。 時間ばかりがなくなっていくことへの焦りなのか、 いつにもまして手厳しい。 もう話にも応じないと言わんばかりの叱責口調に、 私はおろか美沙ちゃんまでが返す言葉に困って黙る。
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