後章

13/43
前へ
/77ページ
次へ
「ちょっ、落ち着こう、一回。 ほら、いつもの丁寧な言葉遣いは?」 「これが落ち着いてられますか。 そもそも、狐さんが取材受けたいとか馬鹿なことを言いださなきゃこんな風にならなかったの。 横宮さんに伝えるなとか脅さなきゃ、 ここまでややこしくならなかったの! それなのにっ…それなのに調子にのってあんな所まで来て!」 「いや、だからー、 今回はちょぉっと嬢ちゃんを困らせすぎたかなーと思って、こうして帰ってきたんだって…」 「今回とか次回とかの問題じゃないの!」 「うんうん、わかるよ。 でも元々断らせるつもりだったんだからさ、 わたしが動くのも自然な流れ」 「全然自然じゃなーい!」 ああ、怒鳴っていたらますますむなしくなってきた。 明日、あの六人と顔を合わせた時、 何を言えばいいというの。 お隣さんを訪ねたあの夜、どうして私はぺらぺらと事情を話してしまったんだろう。 「あー、嬢ちゃん? …うん、もう、いいからさ。 今回の一件は、お互い様ってことにしようか」 わし掴んだ尻尾に顔を埋めてしまった私へ、 狐さんがやや強引に事態の収拾をはかりだした。 「…お互い様?」 「そうそう。 第三者に簡単に話しちゃった君も君だし、 それを利用しようとしたわたしもわたしってことで。 どっちもどっち、話はチャラ。それでいいっしょ」 「いや、いくらなんでも、 それは不条理じゃないかな」 「そんな固いことをいつまでも……え?」 ごく自然に応じてしまった声がぴたりと止まる。 とはいえ、私のほうも何の反応もとれなかった。 それくらい、 その声は背後から唐突に響いてきたのだ。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加