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やがて、狐さんが人形のように首を回し、私は、止まっていた時間を取り戻すがごとく一気に振り返って、
「──横宮さん……」
ベンチの後ろに、同じ人を見つけることになる。
「どうして……あの、話、全部……」
「うん。聞いてた」
途切れがちな私の言葉に、
横宮さんは何食わぬ顔でさらりと答える。
答えながらベンチを回りこんで、
通学鞄を挟んだ隣にごく自然に腰かけた。
「昨日、家にいる間、ふたりとも様子がおかしかったからね。盗み聞きするようで少し気は引けたけど…、おかげで、大体の事情はわかったかな」
この人、一体いつから後ろに。
人の気配なんて全然……って、
私はこのお隣さんほど気配に聡くないけれど。
でも、話を盗み聞きしようと決めて向かう場所が、
どうしてこの公園だったのだろう。
結果的には正しかったわけだけれど、
その考え方の流れがさっぱりわからない。
何も言えないまま隣の人を見つめていたら、
いつものようににっこりと微笑まれた。
…うん。これもやっぱり、横宮さんだからできたこと、なのだろう。そうでないと納得できない。
それに、あれこれと考えられる分、
私にはまだ余裕があった。
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