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私が尻尾を捕まえたままの狐さんは、
先程から目に見える冷や汗をかいて固まっていた。
……見ていると、ちょっと、
さっきまでの怒りが収まってしまうくらい、
追い詰められた感満点の顔をしている。
「──それで……事は、うまく運んでるかい?」
そんな狐さんの肩に、
微笑んだままの横宮さんがぽんっと手をのせた。
その瞬間。
「ひゃっ!」
力の抜けていた私の手から尻尾を奪い返し、
狐さんが身を翻した。
肩に置かれた手も弾いて、見たことのない俊敏さで、そのまま公園の木々の中へ姿を消してしまう。
逃げたな。
「…いいんですか?」
「いいでしょう。周辺に人はいなかったし、
そう遠くにも逃げられないだろうしね」
「………」
ちょっと含みを持たされた今の言い方には、
あえて何も言わないことにした。
たとえ、逃げられないの向こうに逃がさないという言葉が隠れていたとしても、ここは触れないでおくのが一番な気がする。
「それより、さっきの話だけれど。
あれは、栗ちゃんが昨日言いかけた相談と同じ話?」
「え? あ、ええ、そうです」
「で、彼が受けたかった取材っていうのは」
「…元々、横宮さんに来てる話です」
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