後章

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じっとしていると秋の夜は肌寒い。 横宮さんが立ち上がったのに合わせて、 私もベンチから身体を離す。 「そっか。それじゃ、とりあえずその話を……」 歩きだしながら振り返る顔が、私を見てふと思案に染まった。言葉もそれと一緒に止まる。 不意に訪れた沈黙に、私が首をかしげたのも一瞬で。 「…いや、ここは、断ることにしようか」 「えっ?」 「君から、マスメディア研究部さんに伝えてもらえる? 悪いけれどお断りしますって」 思案顔が解けた次には、 きっぱりとした返答が告げられる。 マスメディア部がどんな部なのか、どういう取材話が来てるのか、それくらいは訊かれると思っていた身としては、ひどく拍子抜けする展開だった。 …ひょっとして、あのベンチでの話から私に気を遣ってくれたのだろうか。 だとしたら少し複雑だけれど、 それでも、これが返答であることには違いなかった。 「……わかりました。じゃあそう伝えて……ん? どうして、マスメディア研究部のこと知ってるんですか?」
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