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☆
夜風が流れて、さざ波のように葉音が広がる。
あらゆる物音を包み隠してしまう一瞬に、
隠れていた影が飛び出した。
目と鼻の先の目的地へと、突進と同時に手を伸ばす。
──木々の中に、唐突に存在する白い扉。
「おかえり」
が、計算の利いた正確な動きは、
葉音を打ち消す背後からの声に阻まれた。
びくっとして振り向いたのは、
狐の形をした黄色い影。
振り向いた先、月の明るい場所に歩み出たのは、
その知り合いでこの家の家主。
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