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「ああっ、ここも開かない!
やっぱりそうだ、お前の仕業だなっ?」
「濡れ衣だって。
ここもメンテナンスに入っていたようだね」
「だからメンテナンスって何だよ!
もう何、何がしたいの! うちを帰さないつもり?」
「そうだと言ったら?」
「……え?」
内容のわりに遊びがなかった声に、
狐側の勢いがぱっと消えた。
「いやいや……冗談でしょ?」
「……帰さないっていうのは、さすがに大げさかな。
でも、何も話さないで逃げ帰るようなことはさせないよ。君の口からも説明してほしいんだけど」
「せ、説明って言ってもー…。
わたしはさぁ、嬢ちゃんが取材とか言うから、
そのきらめいた世界の中に少しだけ足を踏み入れたいなぁとか思っただけで…」
「ふぅん。で、
そのためにどんな脅しをかけたって?」
「脅しだなんて、お、大げさな。ちょおっと、
口からでまかせを吐き出してみただけのことで」
相手との距離を稼ごうとするも、背中の感触がすでにこれ以上下がれないことを伝えている。
この状況で、狐はついに、避けることに耐えきれなくなった一語を口にしてしまった。
「あ、あのさ…。
──ひょっとして、怒ってる?」
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