第2章 第3部 限界値

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第2章 第3部 限界値

年末に向けてお店は忙しさを増していく。 休みは週に1日のみ。 そんな生活を続けていれば当然体を壊す。 クリスマスイブ以降俺は38度の熱と戦いながら 仕事をしていた。 俺が休んでしまったら、お店は困る。 お客様も困る。 正直、意識は朦朧としていて 十分な技術提供はできなかった。 営業が終われば、お店のソファーにぶっ倒れて そのまま寝てしまう事も少なくはなかった。 12月30日 年内最後の営業が終わり 俺は月締めをしていた。 頭はぐらんぐらんしていて 目の前は面白いぐらいに見えない。 そして俺はそのまま気絶した。 誰もいないお店で。 1人倒れた。 気がついたのは次の日のお昼1時。 スマホを見ると大量の着信 相手は オーナー 『まだ店いるの?』 『早くこっち来いよ』 『大丈夫か?』 『安否確認だけ欲しいので、連絡してください』 俺は 『心配かけてすみません。お店でそのまま寝てしまいました。今から帰ります』 とLINEで返した。 帰りの電車の中 大晦日に1人俺は何をしてるんだろ。 目の前には楽しそうなカップルや家族。 いや、1人の人達の方が大勢いるのに、 そこにばかり目がいく。 ふとある人物が頭に浮かんだ。 来年も絶対に良い年にしようね!! 今年もお疲れ様でした! 前の嫁さんだった。 その時は何故頭に浮かんだのかは分からなかったが 今となってはよく分かる。 もう体はとっくに限界。 そして次に心が悲鳴をあげ始めた。 無意識に 貴方は頑張ってるよ!だから大丈夫! そう言ってくれていた人を思い出して 自己防衛をしていたんだと思う。 俺は家について泥のように寝た。 そしてそのまま静かに年が明けていく。 2017年 この年は、大きな物を失った年。 幸せにすると誓った人がいなくなり 大好きだった笑顔も3つ無くした。 そして何より人を信じる心を無くして、 そこに蓋をした。 1人で生きていく。 もう恋なんて2度としない。 でも 新しい場所には 新しい出会いがあり 俺の固く閉ざした心を 開こうとしてくれる人。 仕事頑張り過ぎないでね 俺に気を使って声をかけてくれる人。 色んな別れと出会いがあった。 2017年この年を僕は忘れる事は無い。
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