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合流地点では、前後の車が自然と車間距離を開けてくれる。少し加速しながら流れに乗る。
「さて、どこまで行こうか」
「どこまで行きますか」
まいやんが問いかけてくる。
「仙台までは」
「およそ300キロです。時間にすると3時間ほどですね」
3時間、家を出てからも3時間少々。帰りは暗くなってしまうな。
最初、マニュアル車の運転は懐かしく、自分で動かしている感覚が楽しかった。
しかし、いささかくたびれてきた。
右足と左足を踏んだり離したり、左手をカタカタと動かし、右手はハンドルを掴んでいる。
休む間がないではないか。
いい運動だし、ボケ防止にはなるかもしれないが……。
この車に出会ってしまったのがいけなかったな。
正太郎は呟いた。
数週間前のことだ。
正太郎の自宅から少し離れたところに廃車置き場ができた。
散歩のついでに、そこを覗いてしまったのがいけなかった。
廃車置き場ができたのは、しばらく前に内燃機関エンジン車の販売が禁止になったためだ。
世界の潮流に合わせてのことだったのだが、お陰で膨大な数の車が行き場を失った。行き場を失った廃車を置く場がいたる所にできた。
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