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1推される本、読まないボク。
「……ダメだ」
2ページめに入ったところで、ボクはその文庫本を机に放った。
昔から本が苦手だった。
自分が活字大嫌い人間だということに気がついたのは小学生の頃。
皆がダレン・○ヤンやハ○ーポッターで想像力の世界に飛び込んでいる。
ボクはその時睡魔の中にいた。
そして生まれた時代も悪かった。
21世紀初頭、若者の読書離れや紙の本絶滅が騒がれたことがあった。
代わりに電子書籍が顔を出し始めたものの、結局どちらの形態の読書も廃れるのではないか。
しかしお国もやる時はやるのである。
度重なる読書推進政策、図書館の拡充。
推される本本本。
人間勧められれれば読むものだ。
21世紀も半ばを過ぎた現在。
日本は読書ブームのまっただ中にあった。
SNSで飛び交うJK語。
「ごめん、ドクリダ(読書離脱)」
「まじパラフィン(まじでパラフィン紙)」
大学生の間で飛び交うウェーイ語。
「ってかマジ、リアブクワンチャン(リアルブックワンチャンス)」
「掌で(≒秒で。『掌編』から」
凄まじい早さで消費されていくネット用語にもその語録はあり。
「俺の奥書きをごらん(パラリ)」
「重版不可避」
言葉の興隆だけでその人気が図れようというもの。
そんな中、ボクは太宰が読めない。
芥川の良さが分からない。
山月記は虎が人を食う話であってるよね?
「本を読みましょう!!」
担任教師の第一声。
「昨日詰んだ(物理)本が面白くてさ」
これはDQNの言葉。
「グフフ、桐乃ちゃんは俺の嫁ですぞ」
これはもはやジャンルとして定着したラノベを読んだオタクの感想。
「新しい読書は、VR」
「今までは本の始まり。ここからが、本当の読書」
これは読書用VRや眼鏡のセールスコピー。
みんな本、本、本、本。
読書で世界が一杯だ。
読めないボクはため息をつくしかない。
「はぁ……まじパラフィン」
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