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雨の日は特別だ。雨が降ると心が踊るから。雨音が、私にとって心地よいものだから。
わたしが特に好きなのは、さらさらと舞い降りる雨だ。このまま濡れて、全てを洗い流したくなるから。降り続けても、わたしが傷つかないから。音もなく降る雨は、泣きたくなったわたしの心を優しく包んでくれる。
わたしがあなたと出逢ったのも、雨の日だった。
あなたは七年前の梅雨に、わたしを見て笑顔でこう言ってくれた。
「綺麗だね」
そう言うあなたが綺麗なのだと、格好いいのだと、言いたかった。けれども言えない。そのまま、あなたは去ってしまった。
雨の日は好きだ。あなたと出逢えたから。あなたが褒めてくれたから。
でも雨の日は少し嫌だ。あなたに逢えると、喜んでばかりですぐに時間が過ぎていってしまうから。毎年、毎年。
でもいいの。所詮わたしはあと数時間の命だから。社会人になったあなたが、今年もわたしの元に来て、微笑んでくれたから。
単純だけど、それでいいの。それで充分なの。
そう、わたしはーームラサキツユクサの花。今年も、あなたのために精一杯咲く。
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