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「お別れ……?」
「もう火曜日のお遣いは、しなくて良いとユアン様より託って参りました。これまでよくやってくれたと、こちらは気持ちばかりのお礼だそうです」
カーターの手には、これまで貰った事のない様な大金が入っていそうな封筒が握られている。
「なっ、何で? 俺、何か伯爵の気に障ることしましたか?」
「いいえ……ユアン様は、とてもロイ様を好いておられます」
「じゃ、じゃあ、何でっ?」
「好いておられるから、これ以上一緒にいるのはお辛いのではないでしょうか?」
「何それ……」
「ロイ様が十分な生活が出来るよう、後の事は任せると仰せつかっております。何なりと、お申し付け……」
「カーターさん、俺は金が欲しくて伯爵に会いに行ってたわけじゃない!」
「存じております」
「……俺が、伯爵の嘘に気付いてる事が、バレたの?」
「……それは私には分かりませんが、ユアン様は“これ以上飼い殺しには出来ない”と仰っていました。貴方を想ってのお言葉かと……」
困った様に眉尻を下げたカーターは、かつてロイが伯爵家に向かう馬車の中で伯爵の嘘を知っていると話した時と、同じ顔をしている。
あの時彼は「そのまま、お心の中に留め置いて頂きたい」とロイに物悲しく笑い掛けた。
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