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「その足が動かなくても、俺はユアン様が好きだよ」
五歳の頃出逢ったユアンは、車椅子に乗っていた。
美貌、家柄、才能、多くのものに溢れたユアンが両足の自由を失って味わった挫折と失望は、冬の海を昏く深く見せたに違いない。
毎週火曜日に通う様になってこの五年の間、ロイは一度だって椅子から立ち上がるユアンを見た事はない。
「いつから気付いていたんだ?」
机に右肘をついたユアンは、美しい手で見られるのを憚る様に顔を覆った。
「結構前に気付いたよ……」
最後までしようとしないユアンに疑問を持ち始めた頃、ロイは跪いて彼の楔を口に含んで愛撫する際に、体の割に痩せた足の感触が疑問の種だった。
長く使われていない両足は、スラックスで覆い隠されて洒落た革靴のせいで、動かない様には到底見えなかったけれど、吐精前に切なげに潤むナイトブルーの眸が記憶を引き摺りだした。
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