110人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
馬車に揺られて三十分程の所に、ギリギリ市内なのに郊外のような静かな森があり、そこに立派な屋敷を構えるのが由緒正しきマリ伯爵家だ。
屋敷に着いたらまず風呂で体を洗わされ、綺麗にアイロンの掛かったシャツとスラックスに着替えさせられる。
ロイは火曜日だけ、ここの主であるユアン・マリ伯爵様のお傍に遣えると言う仕事をしていた。
「サッパリされましたか? ロイ様」
「カーターさん、今日の伯爵のご機嫌は?」
「朝からご機嫌麗しく、庭など散歩されました」
「あ、そう……」
母親譲りの黒髪に、東洋人のような白肌。
薄汚い孤児の自分に、こんな立派な屋敷に住まう伯爵が何の御用かと思えば、それは子供のお遣いのような仕事をさせられたり、男娼の真似事をする事だった。
ユアンは見た目まだ二十代半ばに見えるが、マリ伯爵家の当主としてワイン産業や輸入食品の仕事でご多忙だ。
最初のコメントを投稿しよう!