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目が覚めたら、世界は空に包まれていた。
窓越しに、青が広がっていた。白い翼を持つ機体はたくさんの人を乗せて、穏やかに空を泳いでいる。いつの間に、こんなに高く上ったのだろう。
眠っている間に見ていた夢から、目覚めて間もなく、また新たな夢を見ているようだった。飛行機の中で見る夢は、醒めると瞬く間にその内容を忘れてしまう。それが何度も繰り返されて、夢と現実の間を彷徨う。現実を、色濃く印象付けたのが、この空の色だった。
青とも水色とも、言い切れない。この色を、何と呼ぶだろう。どの色を混ぜ合わせたら、この色を表現することができるだろう。そう、ついいつものように考えてしまうのは、ひまりの職業病のようなものだ。
色にグラデーションを伴わせる、光。
穏やかに漂う、雲。
上空に広がる朝日が、眩しい。
できるだけ十分に倒した深いグレーのシートから、もたせていた背をあげると、肩の凝りを感じた。出発してしばらくは、機体の轟音が、睡眠の邪魔をするくらい呻いていた。けれど、空港までの道のりでの疲れもあり、すぐさま眠りに陥っていた。
まだ頭がぼんやりとする中、目的地はどこだったか、思い出すより早く、心はバルセロナに向かっていた。
大きくリクライニングした左の座席では、友人のレイが顔を少し上に向けながら目を閉じていた。彫の深い目元には、黒に縁どられた厚めのレンズが、彼女が寝ている間も眼鏡の役割を果たそうと、鼻の上に坐っている。
彼女もまた、空の上にいることを忘れて、眠りに入っているのだろう。普段よりはずっと、幼い表情をしている。
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