二人の男

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「どうぞ。」 春輝はボソッとそう言うと、カバンを女の人の方へ差し出した。 「ありがとうございます!本当に助かりました。」 「いえいえ。これからもお気をつけください。」 「僕達便利屋をやってまして、また何か困ったことがあればお電話くださいね。」 「はい。」 心温は、女性に紙を渡してニコッと微笑んだ。 彼は優しく、男にしては高い声なので、出会う人みんなに天使を連想させた。さらに、髪を白く染めているため余計に天使に見えてしまうのだ。でもその見た目とは裏腹に、空手、合気道、柔道を習っていたので頑丈な体の持ち主でもあった。春輝は、そんな心温にはきっと裏があるだろうと思い、それを見つけるためにひと時も目をはなさないのであった。 一方春輝は心温とは正反対の性格で、どんな人にでも冷たく上から目線。実際背も高く、みんなをみくだしているようだった。でも、頭は良く切れることからほかの人は誰も文句を言えなかった。しかし心温だけは、長年の付き合いだけあり文句をよく言っていた。 春輝はそんな性格でありながら、見た目は少年のような顔立ちで、茶色に染めた髪も天然だからかくるくるとあちこちを向いている。 その髪をふわっと風になびかせ、春輝は女の人に近づきそして、右手を犬の「お手っ」のようにさしだした。 首をかしげた女の人の頭の上にはてなマークが浮かんでいるように見えた。 「依頼料金。一万円。」 「え?」 そう。春輝は金にうるさいのである。 心温は、さっき春輝が犯人に言い捨てた「どうもありがとう」という言葉の意味をようやく理解し、深くため息をついた。
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