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指を刺されるって、何となく嫌なものだね。で、対戦相手はこいつか。
セリフからして、雑魚キャラ確定だな。異世界の時もこういった身の程知らずな将軍がいたよ。つい思い出してしまった。
「始めぇぇい!!」
くだらないことを考えて気を抜いていたら、試合が始まってしまった。緩みすぎたことを反省しよう。
「鬼は~外~!」
手裏剣が飛んできた。これは予想していなかった、だって剣術大会に手裏剣ってあり?
しかし、俺はその全てを避けるではなく、あえて叩き落した。
実力差を知らしめるためだ。
「鬼は外! 鬼は外鬼は外鬼は外鬼は外鬼は外鬼は外鬼外鬼外」
大量の手裏剣が飛んでくるが、しかし、よく噛まないで言えるなとそこに感心する。
異世界では魔弾を斬り砕いていたから、こんなのは余裕なのだ。
「魔道学院の生徒の方が、やっかいだぞ」
「鬼鬼鬼鬼鬼鬼ぃぃぃぃっ」
こうなってしまっては、既に勝負はついたも同然だな。ただ手裏剣を投げるだけの素人のようだ。
全てを叩き落して、喉元に一突きで試合は終了した。
意外と皆弱いのだな。俺が強くなりすぎたのか?
しかし気になるのは『鳥足近侍(とりあしきんじ)』という男だ。他の奴らとは別格のオーラを出している。
その彼が対戦相手となる決勝戦が始まろうとしていた。
こういう試合って、解説担当が選手紹介をするのだが、ちょっと恥ずかしいな。
「総合剣術の使い手『宵東旭日(よいとあさひ)』は高校生ながら、数々の武術を複合したオリジナルの剣技を披露してきた。その予測のできない剣捌きで、対戦相手を悉く切り捨てる旭日は、初参加にして、会場で《剣鬼》と呼ばれるまでに名を知らしめている!」
紹介が悪役っぽい……。
「一方、『鳥足近侍(とりあしきんじ)』は、居合を得意とし純粋に剣道を究めた大学生だ! 彼は高校生剣道大会で三年連続の優勝者であり、そのときのあだ名は《侍》! この戦いは、侍の鬼退治となるか。はたまた侍は鬼に喰われるか」
あれ? これって、俺ヒール役じゃない?
でも、それはもういい。集中しないと、負ける。殺られる。
この感覚は、魔族の幹部剣士と抜刀死合をしたときと似ているな。生きるか死ぬかだけの《死合》だ。
鳥足さんの他とは違うオーラの正体は、殺気だ。彼は本当の殺気を纏っている。その証拠に、俺は竹刀が真剣に見えてきている。
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