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眼は相手の思考を物語る。絶対に合わせた目は離さない。離したら、離した方が負ける。
その集中の渦の中に
「始めぇぇい!!」
会場の隅々まで響き渡るほどの合図で飛び込む。一撃目は一瞬だ。その二撃目に
「メェェン!!」
「ァラアア!」
なんて早い居合抜きだ。斬りつけようとしたが、防御するしかない! そのまま上に跳ね飛ばす!
よし!
胴体がガラ空き、だ、ナニィィィ!?
すぐに斬り降ろしてきた!? まずいっこのままじゃ頭をやられる!
瞬時に竹刀を持つ手を逆手にし、柄で受け止めながら身を屈める。そのまま垂直に地面に突き刺さる竹刀。
『ドゴォンッッ』
竹刀が出す音じゃないが、鳥足さんの威力がわかる。当たれば卒倒していただろうな。
しかし、怯んだ。
鳥足さんの斬撃が、竹刀の反発で弾き飛ばされたため左右に隙ができている!
右足大腿二頭筋に力を込めて、鳥足さんを軸に遠心力ですり抜ける。
背後。
更に体に回転を加え、鳥足さんの背中を斬りつけた。背中でごめん、《回転斬り》!
「ウッ、ソだろ!?」
「一ぽぉぉぉん!!」
鳥足さんは驚いた声を出したが、審判の掛け声ですぐに間を取り、構える。
強い。彼はすごく強い。アニスと戦った時を思い出すなぁ。
「はぁはぁ、鳥足さん、アニスと同じくらい強いっす」
「宵東君、君も相当強いね。背中を斬られるなんて屈辱だよ」
「続きをやりましょう」
「ああ」
あの構えは、居合……。隙が無い。周りはチャンスなのになぜ動かないんだ、なんて思っている事だろう。
だが、間合いに入れば俺は両断される。
考えろ、相手の隙を突く方法を。なるべく早く。
この状態を長引かせてはいけない、鳥足さんの集中力を高めていくが、おれは精神力が削られていく。
居合道。厄介な武術だ。
やるしかないなら、やるだけだ!
右足大腿二頭筋に力を込めた、駿足で正面特攻。
居合が来る。
竹刀を床に突き刺し、身体を直上に跳ばす。
『カァァァンンッッ』
鳥足さんの居合を床に突き刺さる竹刀が受け止めた。
でも、アニスは……
「でもね、アニスは俺に勝ったことが無いんだ」
空中で語りかけた俺を見つけるのに一瞬時間がかかったね鳥足さん。それがあなたの敗因の一つさ。
「どこに行った!?」
竹刀を持ったまま、前宙する。《前宙斬り》!
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