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西洋剣術大会の運営委員に聞いて控室に来たんだろう。
「あれ? 一人かい? 今誰かと話してなかった?」
聞かれてたら面倒だな……。とりあえず誤魔化しておく。
「誰もいませんよ。鳥足さんは大丈夫ですか、頭は」
「ひどいなぁ、それじゃあ僕の頭が悪いみたいじゃないかぁ。ははは」
「いえ、そんなつもりじゃ」
「わかってるよ、わかってる」
なんだこの人、試合とキャラが全然違う。もっと渋い人かと思ってた。
「表彰式が始まるよ」
ああ、呼びに来たのか。一緒に会場に向かうことにした。
「ねぇ、宵東君。最後の、魔王ってなんだい?」
「え?」
こいつ気絶してなかったのか? 迂闊に言うんじゃなかった……。でも、言っても信用しないだろう。
「僕の前世は、異世界の勇者でした」
あえてストレートに言ってみたが、案の定、豆鉄砲を食らった鳩のような顔している。そして、大笑いして言ってきた。
「宵東君は面白いことを言うねっ。さっきまでの鬼のような剣士からは想像ができなかったよ。前世が勇者か」
鬼のような、ね。勇者なんだけどな……。鬼みたいって言われるのはキツイな。だいたいこの人だって全然じゃないし。
「鳥足さんこそ、《侍》って言われてる割には、おちゃらけてますね」
「《侍》なんて試合中の僕しか知らない人達が勝手に付けた名前だしね」
「僕の《剣鬼》ってのも、同じですね」
「でも《剣鬼》ってのは的を得ているよ。あの時の君は恐ろしかった。一撃一撃が命を取りに来てたよね」
モンスターと戦いまくってたから自然と出ちゃうんだよ。殺気。
世界が違えば、殺気の受け取り方がこうも違うのか。
というか、あなただってすごい殺気でしたけど?
「それは鳥足さんもですよ。最後の居合なんて真っ二つにされるかと」
「でもあれはずるいよなぁ、飛び上がるなんてさ。あれこそ異世界の剣技ってやつ?」
案外異世界話は受け入れらているな。まぁ、異世界ではよく使われる身体技術だから本当のことなんだけど。
できる人は多いから魔王に通用するスキルではない。
「ええ、そうです。でも魔王には通用しなかった」
「あはは、出た、魔王! 魔王と戦った勇者か。そりゃ勝てるわけないよな」
んー、やっぱりちょっと異世界話は軽く考えられているな。というかちょっと馬鹿にされてる?
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