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……変な人って思われてるかもしれないけど、まーいっか。もう関わることもないだろうし。どう思われたって。
「僕はね、今まで負けたことが無かったんだ。だから高校生のときも三年連続優勝したよ。あっはは、自慢みたいだよね」
ああ、自慢だな。負けたことが無いか……。俺はそんなことはないから、どんな気持ちなんだろうな。俺に負けて。
「でもね、宵東君に負けて楽しかった。変だよねぇ、負けたのに楽しいって」
「ですね。頭強く叩きすぎましたかね」
「冗談言うねー、でも、アタリ。あの衝撃は対等な剣士、僕以上の剣士がいることの証明だったから」
負けを知って、目標を見いだせたってところか。少し俺と似ているかもしれない。俺は魔王に負けて、本当に救いたいものを知らしめられたから。
そう剣術の話をしながら会場へ入ると、観客が沸き起こって、すぐに表彰式へと移った。
「表彰状、西洋剣術大会優勝『宵東旭日』貴殿は数ある剣術の中で、己の道を究め、他の追随を許さぬ武術で、勝利を手にしたことをここに讃える」
変わり映えのしない普通の表彰式であったが、恙なく終了した。
このために時間をおいて鳥足さんを待っていたのか。時間の無駄だったな。
「そういえば、鳥足さんはなんで表彰式に拘っていたんですか? 普通の表彰式だったし、何か特別なこともなかったから」
鳥足さんは向かい側の観客席を指さして、
「僕の師匠が来ていてね。本当は優勝したところを見せてあげたかったんだけど。まぁ、負けた相手が君なら師匠も許してくれるさ」
そう笑っていた。
師匠という人は、結構な歳に見える。だから、深くは聞かずに納得することにした。
師匠、か。俺の師匠もどうしてるだろうか。魔王討伐の報告、したかったなぁ。
☆
剣術大会から三日後になる。意外と、すぐに転生するというわけにはいかなく時間がかかっている。
「準備はできたかいシャイル」
「神様に言われた通り、ちゃんと遺書は書いたよ」
あ、おい、人の遺書を勝手に読むなよ。神様といえどやっていいことと悪いことがあるかと思うぞ。
「……これでいいのか? シャイル」
「遺書ってこんな感じじゃないの?」
「しかし、こんなことを書いては、宵東旭日としての評価が下がってしまうのでは」
何が悪いのかわからない。俺は事実を遺書に書いただけなのに。
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