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「いいんだよ、正直に全部書いただけだから。嘘を書くわけにはいかないだろ? 神様はうそをつけと言ってるのかい?」
「そういうわけではないが……君がこれで良いというのなら、もう何も言うまいよ」
苦笑いして言われると、こっちとしても気になるんだが……。
「では転生を始めよう」
神がそう言うと、俺の身体は自由を奪われた。
机の上に遺書を置き、部屋を出る。一階に降りると、いつものように母さんに行ってきます。と伝え、出ていく。
いつも通りに、違和感もなく。
公園に来た。懐かしいなぁ、小さいころよく遊んだよ。今も子供がサッカーをしている。道路に飛ばしたら危ないから気を付けるんだぞ。
俺は、そのまま公園のベンチに腰掛けて、遊ぶ子供がいなくなるのを待つ。五時の鐘が鳴りだすと、その子供たちは素直に帰り始めていた。
「また明日なー」
「おう、事故るなよ!」
「おまえもなー!」
友達か。……そういえば、俺。友達いたかな。
……いないな。だって俺が考えていたことはずっと異世界のこと。この世界に興味なんて持っていなかったんだ。
『ガフッ、ゲホッ』
体の芯から熱が上がってくる。ボタボタと滴る血は俺の口から出ているのか。なるべく、他人に迷惑を掛けずに転生をしたかったんだが……、この絵面は酷いな。
子供が帰っていて良かった。
神様も適当だな……。こうなると俺の死因は何になるのだろう。できれば事故がよかった。毒とかだったら自殺になるのかな。
「シャイル。君の死因は自殺と決まっている。遺書を書いたんだ、最後の言葉を残すために。遺書を書いて死ぬ、それは自殺以外ない」
「ああ、そうか、神様。結局あんたは自分の手は直接汚さないってわけか。ここに来させられたのも、毒を飲まされたのも、俺の意思」
でも、神様を責めやしないさ。転生のためだから。
でも、自殺か。母さんと父さんには申し訳ないな。
転生って……本当に死ななきゃならないのか……。
『ゲホ、ゲホッ』
苦しい……。
死ぬのって、こんなに辛い?
……ああ、魔王に負けたときは一瞬だったのか、だから。
『ゲホォッ』
はぁ、はぁ。
ドサ、と前のめりに倒れ込んだ。もう身動きが取れないや。
☆
四日後、情報もまとまってきてニュースになっていた。
「なお、宵東旭日(よいとあさひ)(17)は遺書を残しており、警察はいぢめの線も残して捜査しているとのことです」
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