転生勇者は無双する《転生勇者三部作の二》

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 ニュースキャスターは、抜粋した遺書を次のように読んだ。 「遺書ですが、抜粋した部分にはこう書かれています。お母さん、お父さん、ごめんなさい。十七年間育ててくれてありがとう。勝手なことをして申し訳ないと思います。実は俺は、前世の記憶を持っていました。それは生まれた時から、ずっとです。剣術を始めたいと言ったのも、神様との約束で日本最強の剣士になるという目標があったからです。そして、先週の大会で俺は日本一の剣士になりました。だから俺は、魔王を倒しに異世界へ転生します」  事前に読んでいたのだろう、初見ではないとわかる読み方だ。  討論番組などでは、特殊な題材であるためか、敢えてサブカルチャー否定派人間をオファーし、激論を交わさせる番組もあるようだが、このニュースではすぐに次の話題へと切り替えられた。 ☆ 「軍勢が攻めてきた! 魔王の直属部隊だ!」  衛兵に伝令が届いた。その伝令は即座に拡散され、冒険者たちの集うギルドに伝わるのもすぐだ。 「行くぞティンク。俺たちで止めよう」 「ちょっとムチャだよラスティ!」 「うるさい、俺はこの世界で最強にならなきゃダメなんだ! お前との約束だろティンク」  冒険者ラスティは妖精のティンクを鷲掴む。 「わかったわかったわかったわよ! じゃあ私を装備して」 「《吸収:モデル妖精女王(ティターニア)》」  ラスティの背中には四本の光の羽が浮いており、ギルドを出ると光速で荒野まで飛ぶ。  情報通りそこには大量の魔族の軍勢が待ち構えていた。 「《夏の夜の夢(フェアリーナイトメア)》」  呪文を唱えると、ラスティの背後に光で出来た、およそ百人のラスティが剣を構える。光のラスティは全軍をあげて魔族へ突撃し、無双する。 『待っていろアニス! 必ず君を救ってみせる!』  この世界で最強になり、元の世界に戻る。ラスティはその未来を夢想する。  だから彼は無双する。 『勇者シャイル。君が救う世界は、まだあるぞ』  無双する勇者ラスティを見ながら、神様は次の異世界を探すのだった。  そんなことはつゆ知らず。  勇者ラスティは夢想する。 完 1
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