転生勇者は無双する《転生勇者三部作の二》

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転生勇者は無双する《転生勇者三部作の二》

 突然だが俺は、(異世界の勇者シャイル・サング)であり、十七年前この世界へ転生してきた《宵東旭日(よいとあさひ)》だ。  その記憶は全て持ち合わせており、転生してきた理由は、前の世界で魔王に敗北し、殺されたからである。  その時に残してきた仲間、そして恋人の《剣士アニス》がどうなったか長いこと悩み続けているのだ。  そんな俺が、全日本西洋剣術大会というものを知ったのは先月のことだ。《最強の剣士になる》という目標を掲げる過程で、道場破りは必須であり、そこで大会の存在を知らされた。  この大会には、各国の強者が集い、ありとあらゆる剣術がぶつかり合う。それは、中国武術に剣道、居合道、フェンシング、剣ではないが、槍術や棒術。  西洋剣術と謳ってはいるが、この大会は剣術であれば何でも参加可能なのだ。  槍術や棒術を剣と同じカテゴリーにすると、それは剣術大会ではなく、武器術大会なのではないだろうか、と思うのだが、最強を目指すのに小さなことは気にしない。  そして、予選を勝ち進む中で、気づいた事がある。  イケる。  俺の総合剣術は世界に通用する。  今まで異世界のスキルを取り入れた、オリジナルの剣術で訓練してきたが、この世界ではチート級の身のこなしらしい。  確かに強いであろう選手を一瞬で斬り伏せたりはした。  もちろん、異世界ではモンスター相手に戦っていたから、殺しの剣術だ。それは剣術大会という死の危険がない、安全な戦闘訓練内であっても、自ずと殺気が漏れ出すようになっている。  だから、誰かが一声を放った。 『剣鬼』と。  ……俺は元勇者だぞ。  その俺に向かって鬼とは。まるで魔王扱いだ。 「鬼を倒すのは、桃太郎って決まってるよなぁ?」  なんだおまえは、いきなり突っかかってくるってことは、咬ませ犬か?  適当にあしらうか。 「きび団子をくれたら仲間になってあげるよ」 「ぎひひひひ、鬼なんか仲間にいらねぇよ、大人しく桃太郎に退治されロ!」  すごく、ムカつく。笑い方変だし。  すると横の方から審判の声がした。 「次の対戦カードは『宵東旭日(よいとあさひ)』対『桃太郎(とう・たろう)』! 舞台へ参れ」 「気を引き締めておけ、鬼め!」
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