理想のカレ氏

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 血のように赤みの強いワインの入ったグラスを傾けて、カレはすごく美味しそうに飲み干す。アルコールには強いらしい。いくら飲んでも酔っ払うことなく紳士的で、そんなところも引きつけられた。  テーブルを挟んだ向かい側で、理山早奈(りやま さな)は、幸福そうな微笑みをたたえる若い男の顔を見つめる。  静かな音楽が流れるフランス料理店。高い天井から下げられたシャンデリアは控えめで、華美さを抑えた明かりに照らされた店内は、各座席周囲を華やかに浮かび上がらせて余計な演出をしない。白いテーブルクロスの上の料理はもうあらかた進んでいてデザートの時間だったが、カレはピスタチオをつまみにワインを飲んでいる。 「このあと、どうする? バーで飲み直す?」  ショットバーにはこれまで何度か連れていってもらっていて、そろそろ本格的な大人のオーセンティックバーに、と誘ってくれていたのだけれども、まだ遠慮があった。
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