突き止められない行動

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 まかれてしまった……。  先野は信じられなかった。  まかれた、というのは実は正しくはない。ターゲットの足についていけなかったのだ。  パロッティーニ裕也は、なんと、驚くべきことに延々と歩き続けた。どこまで歩くのかと追っていったが、ついに先野の体力が尽きてしまった。路上にすわりこんでしまった先野の視界から遠ざかっていくターゲット。しかし先野にもう尾行する力はなく、途方に暮れるしかなかった。38歳という年齢を計算にいれても、まさかこんなことになるとは予想外だった。歩き出してから4時間半、夜が明けようとしていた。  こんなにも歩く体力もさることながら、いったいどこへ行くつもりなのか──。  先野は、バッテリーの切れかけたスマホでかろうじて近くにあるコンビニの位置を調べ、這うようにして辿りつくと、店内の一画のカウンターだけの小さなイートイン・コーナーで体力を回復させることにした。
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