みんなしんだ

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えている。町へ着くと薪を求める人々が群がるように男を取り囲んだ。口々に何か言いながら、それは罵声のようで男の顔に幾度か唾が吐きかけられるままわずかな銅銭を残して瞬く間に薪は無くなっていく。言葉を持たない男は指差しで事を済ませると集まった銭を麻袋に投げ入れ揚々と立ち上がった。 「樵さん?」  不意に後ろから声をかけられ、男は振り向いた。視線の先には自分の顔を指差して斧を振る真似をする子供が一人、羽根の先を黒く染めた青い鳥を連れて立っている。男は頷いた。 「この子から聞いたのよ。貴方が助けてくれたって! お礼を言いたくて、お仕事が終わるの待っていたの」少女は一息に言うと手にした赤い袋を差し出した。「あげるわ! 私の宝物なのよ」  袋の中に手を入れて中身をつまみ出す。恐々と取り出せば小さな石が夕陽を浴びて輝いていた。少女は青白い腕をめいいっぱいに振って男にあげると繰り返した。彼もまたそれを理解したように赤い袋をそっと懐にしまうと大きな口で笑みをかたどった。少女の頭をゆっくりと撫でて背を向ける。 「また明日も来てくれるでしょう? 私、待ってるわ!」少女の声が背にかかる。男は森へ向かって歩きだしていた。  次の日のことだ。再び男が目を覚ますと、粗末な小屋の中に一匹の犬が倒れていた。見開いたままの目は濁り舌がだらしなく垂れ下がっている。口の端から零れた泡が薄汚れた床板に染みていた。男は頭を掻きながら犬に近寄った。か細い呼吸は床に散らばる埃一つ飛ばすこともできない有様である。犬の横にしゃがみ込み、男は犬の鳴き真似をして尋ねた。 「お前はどこの犬だ?」 「私はあの町に住む野良犬です。野良であるとはいえきちんとした分別を持ち、町の人に迷惑なんぞかけていませんでした。だというのに昨日の夜、悪戯な子供たちにおかしな物を食べさせられて震えていたところを青い鳥が飛んで来てここへ行けばどんな病も治してもらえると言ったのです。ふらふらと道を進んで着いた時にはすっかり倒れてしまいました。ああ、こうして喋っているのも辛い!」  男は暫く宙へ視線を遊ばせると犬を抱き上げた。 「俺は病など治せやしないが鳥については覚えがある」  犬は切れ切れに礼を言いながら、やがては呼吸音すらたてなくなっていた。 「森の入り口くぐり抜け、一際大きな樅の木を目指せ。樅の木右に曲がったら、朝日に背を向け真っ直ぐに。心臓と同
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