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レースゲームは小学校のときに友人の家でやらせてもらった以来だが、今どきのレースは単純に速さを競うだけではないらしい。道中に転がっているアイテム(しかも中身は開けるまでわからない)を拾い、それらを使ってライバル達を蹴落とし、先頭へとのし上がっていくという、恐ろしい下克上ゲームだ。通常は各プレイヤーの運と戦略とドライブテクニックが試されるはずだが、どうも俺達兄妹が挑むと少しばかり違ったレースになるらしい。
「だからぁ、ジャマすんなって言ってんだろ! なんでこんなところにバナナ置いてんだよ! スリップしたじゃんか」
「きれいに引っかかるおまえが悪い」
「やったー、また一番でゴール!」
ゲームを借りてからのレースはほぼ毎度、藤代がぶっちぎりの首位独走、俺達双子は醜い下位争いだ。妹のゲームセンスが抜群なのか、俺達の過去のゲーム嗜好が偏り過ぎていたせいなのか。実際のところは、妹の運が元々強いことに加え、俺達は暗黙の了解で絶対に藤代にアイテムを使わない。そうして必然的に俺達二人の争いになるのだ。
それにしても、兄妹を含めて八台がレースで争っているというのに、俺達兄弟はいつも悲しいほどに最下位だ。決して好き好んで秋男と並んで走っているわけではないのだが、残念なことにここでもまた藤代に勘違いされてしまう。
「お兄ちゃんたちって本当に仲良いよね!」
「よくない!」
「ふふっ」
「ふーちゃんは、本当にこのゲーム強いなあ」
俺も秋男も、この後に放たれた衝撃の一言を忘れない。いや、忘れることなんてできないだろう。藤代は少し間を置いて、少し照れた様子で言った。
「これはね、彼氏が好きなゲームだから、いっぱい練習したの」
「…………」
部屋の気温が急降下した。もちろん下がったのは、俺と秋男の周りだけだが。
恥ずかしそうに「今度お兄ちゃんたちにも紹介するね」と言った妹の声は、当然俺達の耳には入ってこなかった。
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