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「ああ、飽きないな。プラモを組み立てる楽しみ、完成した時の喜び。非常に男心をくすぐられる。これぞ男のロマンだな。まあ、ギャルゲーばっかりしてるおまえにはわからんだろうが」
俺に似ているぐらいだから弟の顔は決して悪くないし、人とのコミュニケーションも問題なく取れるのに、どうしてわざわざ二次元の女の子を相手にしているのか謎だ。現に学校では、俺より秋男のほうがモテていると思う。まあ、俺の場合は仮にモテたところで、それはたいした問題ではない。どのみち妹が不動の一番だからだ。自分でも歪んでいると思うが、物心ついた頃からそうだったので仕方がない。決して、顔が一緒なのに同級生にやたらキャーキャーと言われてる弟を、羨ましいなどと思ってはいない。たぶん。
俺が放った『ギャルゲー』という単語に反応したのか、参考書に目を向けていた秋男はぱたんと本を閉じ、射るように俺の顔を見た。
「おれのはれっきとしたアドベンチャーゲームだ! あれで女の子とコミュニケーション取ってんだよ。よくわかんねえロボット戦争ゲームしてる兄貴と一緒にすんな!」
「あれは戦略を練るから頭を使うんだ。おまえのやってるお気楽極楽なハーレムゲームと違ってな」
指で脳を差して見せてやる。彼の言うロボット戦争ゲームというのは、ゲームセンターに設置されているアーケード用ゲーム機のことである。本物のコックピットをイメージして作られたドームスクリーンに入り、百を超える種類の中からロボットを選択し戦場へ出撃する、戦術がものをいう対戦ゲームだ。ちなみに、据え置き型ゲーム機でも発売されていて、俺はお小遣いを貯めて最近購入した。もちろんこっそりと。
愛読書は月刊プラモデル、ロボットアニメやゲームを嗜み、作中に登場した機体を片っ端から製作して大事に飾っている俺が言えた義理ではないが、弟の趣味もそこそこ偏っていると思う。時間があればギャルゲーのプレイに費やし、画面の向こうの美少女キャラクターには密かに妹の名前をつけて楽しんでいる。俺とは違うベクトルで、あいつもかなり歪んでいる気がする。最近俺が秋男の部屋に行ったときに偶然見たのは、爽やかな弓道部の女の子だった。理想と願望、入りまくり。
「ああそうかよ。だったら兄貴は普段からもうちょっと本読めよ! だから文系の科目弱いんだろ!」
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