知られたくない秘密

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「弱いといってもおまえとは僅差だろ。それに、ライトノベルばっかり読んでるおまえに言われたくない」 「ばかにすんな! おれだってフツーの本も読んでるよ!」 「へえ、例えば?」 「『注文の多い料理店』とか!」  それは夏休みの課題図書で読んだやつだろう。 「春兄ちゃん! 数学おしえてー」  三回のノックの後、入ってきた来訪者にぎょっとする。慌てて手元にあったプラモデルを背中に隠す。危ない。秋男と白熱していて、第三者に対しての反応が鈍くなっていた。 「あれ?」  中学生になったばかりの妹は、不思議そうに俺達を見ている。セーラー服がとてもよく似合っていて、目に眩しい。いや、そうではなくて。 どうか気付かれていませんように。心の中で必死に祈り倒した。 「お兄ちゃんたち、なにかお話してた? もしかしてあたし、ジャマしちゃったかな?」  俺の部屋に秋男がいたから気を遣ったのだろう。彼女はなぜか、俺達双子が仲良しと勘違いしている。部屋に入ってきたときの勢いはどこへやら、一転して申し訳なさそうに出ていこうとする。 「えっと、あとでまた来るから……」 「待て、大丈夫だ」  去っていこうとする妹の藤代の背中に、あわてて声をかける。 「数学見てやるから、着替えておいで」 「本当? ありがとう! もうすぐ中間テストだから困ってたの。すぐ着替えてくるね!」  制服のままの妹は、嬉しそうににこっと笑って部屋から出ていった。俺も笑顔で見送りプラモデルを急いで片付けていると、弟が腕を組んで、険しい顔でこちらを見ている。 「なーにが『着替えておいで』だよ。気持ち悪いなあ。しかも数学教えるって? ふーちゃんも、なんで兄貴なんかに聞くかねえ」 「僻みはみっともないぞ。藤代が俺を頼ってるんだから仕方ないだろう」 「プラモの隠し方も雑だし。まあ、クローゼットの中に引くぐらいキレイに並べてるのもどうかと思うけど」 「おまえもラノベのカバーはずして、普通の本として偽ってるだろう。そんなことしてる暇があったら、部屋で微分積分でも解いてろ」 「うっせーな。理系の教科は、誰かさんみたいに堅苦しくてニガテなんだよ」
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