1人が本棚に入れています
本棚に追加
それからまた異世界を覗いた。
東南辺りで火が見える。ドラゴンか人か……だけど
今はそんな事どうでもいいか。
魔法城の近くには森がある。今日は特に変動は無し
何かおかしいのは森を抜けた砂漠地帯だろう。あちこちに窪みが出来、地面を割いた様な切れ目もある
恐らくは戦いだろう、勇者かそれ以外の誰かか。
「矢間さーん」
はぁ……低く、聞き取りにくい声
きっと大家さんだ
「はい、何ですか?」
「おはようございます。大家ですけど部屋に入っても?」
「どうぞ。散らかってますけど」
初めてここに来て驚いたのは大家さんが若く、髪も
あって、おじさん顔じゃなかった事だった。想像していた大家さんとは歳も顔も性格もずっと違った。
でも、社会とは不思議な世界、慣れてしまえば笑い話だけどね。
「……派手だね」
「そうなんです。派手なんです」
「こりゃ~しばらく騒音との戦いになりそうだね」
「ええ。さっきも中美さんが来ましたよ。うるさいってね」
私と大家さんは同じ箇所を見ていた。魔王城近くにある砂漠地帯
「ま、私も何とかしてみますけどね。矢間さんもちょっと言っといてくれませんか」
「分かりました……じゃまた」
大家さんは扉をゆっくり閉めて、見えなくなった。
声を使い過ぎると、異世界が混乱してしまうからあんまり使いたくはないんだけど。
私は溜息を床に吐いた
声を伝えられるのは一日に一人だけ。それから声が伝えられるのは私だけ。しかし、私はその伝えた一人以外の異世界住人の声が聞けない。
「勇者さん、勇者さん」
私はなるべく優しい声であの窓に話しかけた
「あ、フリード様!声が聞けて私は非常に光栄でございます」
フリードとはこの世界で言う神様に当たる語らしい。何となく覚えた。
「で、戦いはどうだい?順調ですか?」
「いえ、四天王の一人に逃げられてしまいました」
勇者は顔を顰めた
最初のコメントを投稿しよう!