きみの声を見失わないように

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 返す言葉が見つからなかった。周囲に暗いと思われてることは気付いてたけど、そんなふうに言われたことなんてなかったから。  今も変わらず笑顔で私を見つめている関口先輩の前にこれ以上いたくなくて、私は小さな、ほんとに小さな声で「ごちそうさまでした」と言って、お金だけ置いて足早に店を出た。  「あっ、おい!」と後ろから声が聞こえてくるけど、その声に反応することなく、私はそのまま帰宅した。……あ、レシート。 「あ、滝川。今日はよろしくなー」 「……」  出来るだけ会いたくないと思っていたのに、昨日の今日でもう先輩に会ってしまった。どうして今日に限って先輩と図書委員の当番が一緒なんだっ! 「そういえば滝川が誰かと話してるとこって見ないけど、何で? 人見知り?」  昨日も思ったけど、どうしてこの人はこう、暗い奴だとか人見知りだとか、普通はなかなか面と向かって言えないようなことを言ってくるんだろう。しかも本人には多分、悪気はないんだろう。声音から嫌味なものは感じないし。こうやってどんな人にも普通に話しかけたりするから、この人は人気者と言われてるんだろうな。
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