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私はスマホを取り出して操作すると、それを先輩に見せる。
『自分の声がコンプレックスなんです』
関口先輩はその文字に目を通すと、スマホから目は逸らさないまま口を開く。
「でも昨日聞いた滝川の声、可愛い声だと思ったけどな。なんていうか、透き通ってる声、というか」
「俺は好きだぞ」と顔を上げて私と目を合わせながらにかっと歯を見せて笑う関口先輩に、開いた口が塞がらない。
私が高くて嫌だと思っていた声を、透き通ってるだなんて、真逆のことを言われて、自分との価値観の違いを思い知らされる。「好きだ」なんて、家族以外の人に言われたことなんて、今まで一度だってなかった。
どうして関口先輩は、そんなふうに思ったことを素直に言葉に出来るんだろう。
どうして私は、そんなふうに言ってくれた先輩に「嬉しいです」とか「ありがとう」って、言えないんだろう。
関口先輩の言葉が嬉しくて嬉しくてたまらないのに、それを言葉に出来ない自分が、本当に嫌だった。
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