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桐島さんもいつの間にか側に来て、彼女に合わせ腰を屈め 膝を折った。
「すまない 萌。俺は、お前に対して思い遣りの一つもなかった」
「龍生さん…」
「自分の置かれた立場ばかりを考えて卑屈になって、萌の気持ちをわかってやろうともしなかった。散々苦しめておいて、今さら謝っても遅いな」
「うっ、ヒック」
「だけど、菜々花から社長と話をするとLINEが来て慌てた俺に、萌は車の居場所を教えてくれた。うちの借金のことも、ちゃんと正直に打ち明けてくれた」
「…ううっ」
目を細めた桐島さんは、柔らかな笑みを浮かべ 萌ちゃんの頭をそっと撫でた。
「ありがとな。こんな俺を、ずっと大切に想ってくれて。感謝してる」
「龍生さんっ!」
くるりとした可愛い瞳から 大粒の雫が流れると同時に、萌ちゃんが彼にしがみつく。
彼の胸の中で しゃくり上げて泣く彼女を眺めていても、気持ちは妙に穏やかだった。
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