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『起業?!会社を起こすってこと?』
『そのまんまだな。そうだよ』
真吾は呆れたように言い放ち、おもむろに立ち上がると自分のビジネスバッグからバインダーを取り出してきた。
それからテーブルの上にあったチューハイの缶を床に置き、ティッシュでいそいそとテーブルに残った水分を拭き始める。
その一部始終をなんとなく眺めながら、真吾が言った台詞を酔った頭で理解しようと努力していると、あっという間に目の前に〝紙〟が並んだ。
『…何これ?』
『菜々花、聞いて』
いや、聞いているのは私だ。
『起業する為にさ、俺らの金を掻き集めても足りないんだよ。銀行も冷たいし、昔人間の親はIT関連会社の起業なんて通じなくて、金を貸してくれない。だから』
『だからぁ?』
『頼む!ここにサインして押印してくれないか?』
『サイン…?』
『先週、印鑑証明を取りに行ってくれたんだろ?それもこの為なんだ』
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