1013人が本棚に入れています
本棚に追加
/524ページ
それから真吾は、本当に直ぐに会社を辞めて〝起業〟する為に走り出した。
やがて私と会うどころか、そのうち連絡も寄越さなくなった。
大学の仲間と一緒とはいえ、会社を立ち上げるというのは相当大変なことなのだろうし、邪魔をしてはいけないと思っていた。
ーーあの日
桐島さんが 私の前に現れるまでは。
『緒方 菜々花さんですね?』
仕事が終わり、会社のエントランスを抜けた所で いきなり爽やかなイケメンに呼び止められた。
そこだけがカッコいいオーラに包まれていて、私だけでなく他の数人の女子社員まで 立ち止まる。
私の知り合いに こんないいオトコがいたっけ?
けれど いくらイケメンでも、まるで待ち伏せしていたように声を掛けられ、フルネームを呼ばれるのは気味が悪い。
『…あの、どちら様ですか?』
『あぁ 失礼。名刺を…私は、こういう者です』
最初のコメントを投稿しよう!