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『よく存じ上げません』と言ったくせに、桐島さんはその後、移動した近くの公園で真吾行方不明事件の詳細を教えてくれた。
社会人になって たかたが二年の連中が、たいした知識もなく会社を立ち上げようとしていたこと。
真吾たちが起業の為にお金を借りたのが、いわゆる〝闇金融〟だったこと。
借金は あっという間に膨れ上がり、やんわりと始まった闇金の取り立てに怯えていたこと。
一ヶ月前、真吾たちの〝オフィス〟が もぬけの殻になったこと。
もちろん、個々の自宅にも誰も戻らず 一切連絡がつかなくなってしまったこと。
『あんた、青山の彼女なんでしょ?まさか彼氏を匿ったりしてないよね?』
私を観察するようなビームが、黒縁眼鏡の奥から放たれている。
『してませんよ!真吾が行方不明なんて 初めて聞いたのに!』
かなり距離を置きベンチに並んで座っていたけれど、思わず桐島さんに詰め寄った。
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