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両手で顔を覆うと、彼女はわあっと声を上げて泣き出した。
「せ、先輩っ、ごめんなさい、本当にごめんなさいっ!」
どうにも堪らなくなって、桐島さんから離れ しゃがみ込んでいる萌ちゃんに駆け寄る。
「先輩のこと、大好きなのにっ、嫌なことばっかりして、私っ!」
「萌ちゃんっ」
「今朝、先輩に全部話して きちんと謝ろうと思ったの!でも、いきなり部長に結婚のことを言い出されて」
「うん、うん」
「何かに取り憑かれたみたいに、まだ間に合うんじゃないか、龍生さんが戻ってきてくれるんじゃないかなんて、バカなこと考えて」
「もういい、もういいよ!」
「マ、マンションに先輩が来た時と同じで、自分が何やってるのか わからないくらい、嫌な女で!」
「萌ちゃん!」
どれだけ自分と戦ってきたんだろう。
どれだけ、桐島さんが好きだったんだろう。
泣きじゃくる後輩の背中を、ただひたすら摩る。
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