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コツコツコツーー
まだまだ退屈な話が続きそうな木村さんの背後から、規則的な足音を立て 漸く待ちわびた〝奴〟が近づいて来る。
来るのが遅いんじゃ、ボケーー!
…と、脳内で舌打ちしながら 木村さんには笑顔を向けた。
これでやっと、解放される!
「…お話し中失礼します。申し訳ありません木村さま、お時間ですが」
途端に木村さんは眉間に皺を寄せ、ゆっくりと後ろを振り返り〝奴〟を確認するとまた、私に向き直る。
「もうそんな時間か…音々ちゃんといると、時間なんてすぐ過ぎるね」
〝奴〟を無視して木村さんが微笑んだ。
「そ、そうなんですか?ありがとうございます…」
「次もぜひ、君をお願いしたいな」
そのねっとりした眼差しは 決して口先だけではない、と思う。
ゾゾッ、と背筋を嫌なものが走った。
頑張れ、私!
この人は一応お客様なんだ。
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