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「どう?初仕事は?」
比較的空いているコーヒーショップで、開かれたパソコン越しに男が私を見つめた。
「要領は掴めたか?」
この男が、先程私が登場を待ちわびていた〝奴〟である。
細いフレームの黒縁眼鏡の奥は、吸い込まれそうに綺麗な澄んだ瞳。
整えられた緩やかなダークブラウンの髪は、清潔さを醸し出している。
この蒸し暑い季節、涼やかにスーツを着こなし、パソコンに向かってスマートにキーボードを叩く姿は〝いかにもデキル男〟だ。
時々この男に飛んで来る、明らかなピンク色の熱視線をビシビシと感じる。
私たちの関係を知らない周りの人々から見れば、こんなイイ男と一緒にいる私は不釣合いだと思われているに違いない。
「…おい、答えろ」
バリトンボイスが吐き出され、ハッとなった。
「はい?」
「どうだったか、と聞いてる」
眼鏡の奥が、呆れたような目付きに変わった。
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