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「あの木村さまは、あんたのような超初心者向けの顧客だ。この仕事に慣れるまで、しっかりと勉強させてもらえ」
「…」
思わず俯いてしまう。
すると、溜め息と共に男の言葉が頭上から降ってきた。
「木村さまが苦手なのか?さっき聞いた今日の報告からしても、システムのルールはしっかり守ってくださっているし紳士的だし、あんな優良な顧客は」
「いえ、木村さんがどうこうじゃなくて」
「じゃあ、何?」
「…あのぅ」
一応、
一応聞いてみよう。
囚われてしまった可哀想な姫が、助かる道は本当に他にはないのだろうか?
「桐島さん、このお仕事以外で お金を返す方法、ありませんか…?」
桐島さんは眼鏡のブリッジを人差し指でクイッと上げた。
次に、何故かネクタイの結び目を左右に少し緩め出す。
一連の動きが妙に色っぽくて、思わず見とれてしまった。
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