初めてのお弁当

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「音々」 パソコンを見つめる私の耳元で、バリトンボイスが囁かれた。 借り物の、私の名前。 それなのに心地良く感じてしまうなんて。 「俺が今回 あんたを選んだ理由、わかっただろ?」 「…」 「音々はそのままでいい。充分 魅力的な女だ」 そんなセリフは反則だ。 身体がカッと熱くなる。 こんな、レンタル彼女業なんてやっている男に翻弄されたくはない。 「それはありがとうございます。上っ面だけで女扱いが上手い〝レンタル彼氏〟みたいですね」 「…褒めてやってるのに、可愛くないな」 「そうですか!桐島さんに嫌われたみたいなんで この仕事辞め」 「二百万」 「鬼畜!」 「何とでも言え。悔しかったら、しっかり〝レンタル〟されて儲けることだ」 あぁ、借金さえなければ…! 「菜々花」 急に本名を呼ばれ、驚いた。 「借金返済して縁が切れてからも、ずっとそのままでいろよ」
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