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バイトの終わる時間までムシャクシャ気分が治まらず、接客で短時間の笑みは作れど裏に引っ込むと本性剥き出しになってしまう。
そんなあたしの様子にマスターは触らぬ神になんとやらでほとんど近付いて来なかった。
あたしはマンションに帰り着くと苛立つままに部屋のドアを開けて二重の鍵を閉めていた──
そんなあたしの携帯電話が鳴り響く。
「なにっ!?」
「──…っ…」
向こう側は電話に出たあたしの勢いに一瞬怯んだようだった…
「ご機嫌斜めだな?ケンカしたか役者の彼と?」
「してないよっ」
これからだよっ…
ってことを言っちゃうとコイツを調子に乗せてしまう恐れがある。
「なんの用っ?」
「声聞きたかっただけ」
「………」
あの日──
あたしがプロポーズの断りを入れようと電話した日以来…
高槻はこうやってちょこちょこ電話やメールを寄越してくる。
「電話しないでって言ってるじゃん…」
「三年間黙ったままなワケにいかないだろ?結婚したい相手にアプローチするの当たり前っ!」
「………」
「追うの俺、大好きっ」
「バカじゃんっ」
「バカじゃないね。これで今の彼氏と別れたら万々歳!俺、直ぐに迎えに行くから」
「………」
何を言ってもだめだ…
そう思ってあたしは諦めた。
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