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外に出ると昼間の残暑の面影もなく、秋風が肌を撫でていく──
Tシャツ一枚ではさすがに肌寒くなったこの頃。
やっぱこんな日は人肌が恋しくなる……。
俺は晶さんに電話を掛けた。
前回のオナニー事件のこともあり、部屋に行くときは必ず一報入れるように晶さんから厳しく言われている。
抜き打ちの訪問をすると晶さんは怒るから、あれ以来仕方なしに俺は連絡を入れるようにしていた。
「抜き打ちで行って晶さんの生オナニー見たいのに…」
電話の通信音を聞きながら俺は呟いた。
「なにですか?」
「……え?」
電話口に出た途端、返しのおかしい晶さんに俺は驚いた。
「なにって…今からそっち行くから」
「今日は疲れたからもう寝る」
「………」
「おやす…」
「一緒寝る」
「………」
「今から行くから寝てていいよ」
なんなんだ?
なんだか様子がおかしい…
「ゆっくり寝たいから来なくていい」
「……なにそれ」
「ゆっくり休みたい。ベッド狭いから夏希ちゃん来たら窮屈なる…」
「………」
「おやす…」
「今から行くからっ」
やっぱおかしい…
考えながら俺はタクシーを直ぐに拾った。
・
降りたタクシーのドアが背後で閉じて走り去って行く──
俺は晶さんのマンションの下に着くなり鍵を取り出しながら足早に向かった。
先程までの摺り足が板に着いたのか足音は異様に静かだ。
鍵をドアに差し込んで開けると何かが引っ掛かって開くドアを引き戻した──
「マジかよ!?」
隙間から覗けば中からチェーンがしっかり掛けられている…
「ちょ!?晶さんなにこれっ!?開けてっ」
ドアの前から思わず叫んで呼び掛けたら隣家から眼鏡の住人が訝(いぶか)しげに覗いている…。
俺は顔を隠しながら頭を下げた。
「晶さんっ頼むから開けてっ!」
小声で中に訴える。
部屋に居る筈であろう晶さんからの返事はない。
なにがしたいんだよ一体!?
訳もわからず焦りが浮かぶ。
俺は晶さんにメールを打った。
⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒
お願い開けて
(ρ_;) 逢いたいっ
⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒
泣き落としで様子を見る。
それでも待てど暮らせど返事は返ってこない──
⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒
ヽ(・∀・)ノヽ(・∀・)ノ
パンツ被って走るぞ~
⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒
晶さんはおバカな内容にも乗ってこなかった──
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