113人が本棚に入れています
本棚に追加
「おはようございます」
ドラマ撮影も順調に進む中、俺は久し振りに事務所に顔を出していた。
「おお、舞花に押し倒されたんだって?楠木から聞いたぞ」
「………」
俺は誰のせいだと言わんばかりの視線を社長に向けた。
「迫ってくるくらいなら可愛いもんだろ。なんて誰かさんは言ったけどね…楠木さんがこなかったら危うく犯されるとこだったよ」
嫌味も露に言ってやったけど堪えるはずもない。
「はっ…そりゃ危なかったな」
「……あいつ細いくせに力ありすぎっ…」
「そりゃそうだ」
「……?」
「舞花の親父さんはレスリングのコーチだ。舞花は中学までレスリングやってたからな…」
「なにそれっ!?」
初耳だっつーのっ!!
髭のチンピラは今更な情報を俺に教えた。
「骨が太くなるからって高校ではやめてる。舞花は高校デビューってヤツだ」
「なる…」
それであの押さえ込みかよ…身動きできないはずだわ…
「下手したら俺、ヤられちゃうじゃん」
「だな…はは」
軽い笑いになんだかムカついた。
「でも、ちっとは考え直しただろ?真面目に芝居に打ち込み始めたって楠木から聞いたぞ?」
「さあ…」
確かに髭の言う通り、俺に迫って楠木さんに連れて行かれた次の日から、舞花はやけに大人しかった。
最初のコメントを投稿しよう!