11章 不安的中…

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「舞花、行くから早く飲んでっ!ごめんチェックお願いっ…」 あたしの表情を見て楠木さんはヤバイと思ったのか急かされてムクレる彼女を追い立てるように席をたった。 レジで清算しながら目だけでゴメンと詫びてくる。 先に店を出る彼女の背中を見ながらあたしは言った。 「あたしが夏希ちゃんの恋人だって知ってるんですか彼女はっ?」 マスターに聞こえないようにあたしも身を乗り出して楠木さんに耳打ちするように尋ねた。 あたし自身もまだ夏希ちゃんとのことはマスターに知らせていない。 「この間のゲリラ番宣の時に気づいたらしいんだよ…」 楠木さんはこそっとそう言った… 「ゲリラ番宣──…」 なるほど… 確かに他の出演者達に交えて彼女もヘリでデパートの屋上に駆け付けた。 ヒロインなのだから当たり前のことなんだろうけどあの勝ち誇ったような表情はちょっとちょっとっ──! …て感じだ。 「……でっち上げのスキャンダルの為だけの恋人だった。って夏希ちゃんから聞いたけど…なんかそれだけじゃないって感じですね…」 「いや…っ…そうなんだけどっ…ちょっと色々とね…っ」 冷ややかに尋ねるあたしを前にして、楠木さんは取り繕うように焦っている。
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