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 それから何年も過ぎ、私は成人して結婚した。  そして、ある日、祖母から昔の話を聞いた。  浅草から赤坂までデートをしたときの話。  祖父が病気で入院していた時の話。  けして楽しい話ばかりではなかったが、どんなことも祖母は頬を赤らめて話す。  ああ、今でもおじいちゃんを好きなんだなあ……  聴いている方もドキドキしてしまう。  子供の頃には存在の薄かった祖父は、亡くなって何年もたった今、私の中で大きな存在になっている気がする。  祖母の家に行くと、仏壇にはいつでもきれいな花が添えてある。  それは、祖母が心をこめて育てた、庭に咲く花々だ。  季節によって、チューリップだったり、アジサイだったりする。  お菓子をもらうと、必ず最初に仏壇に供える。 「おじいさん、美味しいお菓子をもらいましたよ」  にこにこと、声をかける。
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